【腹筋を鍛える前に】“ドローイング”で始める体幹づくりと、まず基本の動きが大切な理由
2025/09/03
「はじめに:いきなり腹筋運動、やっていませんか?」
「腰が痛くなってしまいました…」
そういった訴えを抱えて当院を訪れる方、私たちには本当に多くいらっしゃいます。特に次のような方にその傾向が強いようです。
・筋力に自信のない方
・長年運動習慣がない方
・姿勢が気になる方
・「なんとなく不調」が続いている方
そうした方ほど、つい「腹筋=身体を起こす」という強めのイメージを持ってしまいがちです。でも、その前に知ってほしいのが…
腹筋を“動かして鍛える”のではなく、まず“感じ取って使えるようになる”ことの大切さ
これが本記事の核心です。
なぜ「いきなり腹筋」ではなく「感じる力」?
運動習慣が少ない方や筋力に不安がある方の多くには、次のような状態が見られます。
・呼吸が浅く、息が胸中心になっている
・おへそ周りに力が入っていない(意識できない)
・猫背、反り腰など姿勢のクセが習慣化している
・「お腹が効いている感覚」がわからない
こうした場合、いきなり腹筋を鍛えようとしても、「どこを使えばいいかわからない」「腰が痛くなる」「別の部位に力が入りすぎる」といった問題につながることが少なくありません。これは、「動かす前に、感じ取る力」が欠けている状態と言えます。
小さな変化から始めるステップの提案
そこで、私がおすすめするのが…
1.“自分のお腹を少し意識してみること”から始める
例えば、仰向けになり、息をゆっくり吐きながら「自然にお腹が小さくなる?」という感覚を探してみるだけでもOK。これだけで「使われていなかった筋肉」に少しずつ気づいていきます。
2.その感覚がわいてきたら、“優しく使う”動きへ
強くへこませるのではなく、息とともに「ふーっと自然にへこむ」といった小さな動きを続けてみてください。ここで大切なのは、「無理なく続けられること」です。
3.日常の中に取り入れてみる
椅子に座っているとき、立っているとき、歩いているとき…「ふっと息を吐いた瞬間にお腹を感じる」習慣が生まれてくると、自然と体幹が育っていきます。
このように、“感じる”ことが「治療のいらない身体」の第一歩となります。
「ドローイングってなに? どうして体にいいの?」
1. ドローイングは「お腹を引っ込める呼吸の体操」
ドローイング(またはドローイン)は、息を吐きながらお腹を少し引っ込める体操です。
ただし、ただの「お腹へこまし競争」ではありません。お腹の奥のほうにある「腹横筋(ふくおうきん)」という筋肉を目覚めさせるための動きです。
この腹横筋は、背骨や内臓を包み込むように広がっていて、コルセットのように体を支える役目をしています。姿勢をまっすぐにしたり、腰を守ったり、呼吸を手助けしたりする大事な筋肉です。
でも、この筋肉は体の奥にあって目で見えないため、普段の生活ではあまり意識されず、さぼりがちになります。そこで、ドローイングで「ここに筋肉があるよ」と体に教えてあげるのです。
2. 科学が証明するドローイングの効果
最近の研究では、ドローイングを続けると腹横筋が厚くなったり、体のバランスが良くなったりすることがわかっています。例えば、超音波検査で筋肉の厚みが増えたという報告もあります(日本の理学療法の研究より)。
また、腹横筋を鍛えると腰の痛みを減らす手助けになることも知られています。腰が安定すると、背中やお尻の筋肉にも余計な負担がかからなくなります。
さらに、腹横筋がしっかり働くと骨盤や背骨の位置が整いやすくなり、猫背や反り腰の改善にもつながるというデータもあります。
これは、大人になってからの姿勢づくりや、5年後・10年後の「動ける体」を守るためにもとても重要です。
3. なぜ「小さな動き」から始めるのがいいの?
筋トレというと、腹筋運動やスクワットのように大きく動かして疲れる運動を想像するかもしれません。でも、筋力が弱い人や運動に慣れていない人にとって、それはハードルが高く、ケガや痛みの原因になることもあります。
その点、ドローイングは
・寝たままでOK
・椅子に座ってもOK
・1日数分でもOK
という手軽さが魅力です。大きな動きではないので、筋力や体力に自信がない方でも始めやすく、「続けられる運動習慣」になりやすいのです。
4. ドローイングをやると何が変わるの?
・姿勢が安定する
体の中心がしっかりしてくるので、まっすぐ立つのが楽になります。
・呼吸が深くなる
お腹と一緒に横隔膜も動くため、自然に息がたくさん入るようになります。
・動きが軽くなる
歩く、立ち上がる、荷物を持つなどの日常動作がスムーズになります。
こうした変化は「筋肉ムキムキになる」というより、体の中の支えがしっかりする感覚に近いです。だからこそ、将来の健康や動ける体づくりにつながります。
「ドローイングのやり方 ― 寝たまま・椅子でもできる!」

1. 仰向けでのドローイング(初心者におすすめ)
このやり方は、腰や首に負担がかかりにくく、リラックスしながらお腹の奥を意識できます。
1.仰向けに寝る
床やベッドに仰向けになり、膝を軽く立てます。腰や背中に無理な反りがない状態が理想です。
※硬い床ならヨガマットやバスタオルを敷くと快適です。
2.息を吸う
鼻からゆっくり息を吸い込み、お腹をふくらませます。胸だけでなく、お腹全体に空気を入れるイメージ。
3.息を吐きながらお腹を引き込む
口から細く長く息を吐き、おへそを背骨に近づける感覚でお腹を引き込みます。
※肩や首に力が入らないように注意。
4. 5〜10秒キープ
吐き切った状態で呼吸を止めずにキープします。慣れてきたら10秒へ延ばしてみましょう。
5.ゆっくり戻す
再び鼻から息を吸って、お腹を元に戻します。
2. 椅子に座ってのドローイング(仕事や家事の合間に)
1.背もたれから少し離れて座る
骨盤を立て、足は床にぴったりつけます。背筋は自然なカーブでOK。
2.呼吸+引き込み
仰向けと同じ要領で、鼻から吸って口から吐きながらお腹を引き込みます。
3.日常動作と合わせる
パソコン作業中やテレビを見ながらでもできます。背もたれに寄りかからないことで自然に腹横筋が使われます。
3. 続けるコツ
(1)短時間でも毎日やる
長時間やる必要はありません。1回30秒〜1分、1日3回でも効果があります。大事なのは「毎日体に刺激を送る」ことです。
(2)「ついで習慣」にする
・朝起きてすぐベッドで1回
・歯磨き中に立ったまま1回
・信号待ちのときにそっと1回
生活に溶け込ませると、無理なく続きます。
(3)呼吸を止めない
力を入れすぎて呼吸が止まると逆効果です。吐く→吸うの流れを優先しましょう。
4. よくある失敗と対策
・肩が上がってしまう → 肩の力を抜くことを意識
・腰が反ってしまう → 骨盤を立てるか、仰向け時は腰と床の隙間を意識
・お腹を押し出してしまう → 吐くときにお腹を内側へ引き込む感覚を優先
5. 科学的な裏付け
研究では、週3回・4週間のドローイング練習で腹横筋の厚みが増し、姿勢の安定性が向上した例が報告されています(理学療法学会誌より)。
また、椅子に座って行うドローイングも、骨盤の安定性向上と腰痛予防に有効とされています。
「ドローイングで体が変わる3つの理由」
ドローイングは、見た目はとても地味な運動です。
でも続けていくと、体の中で大切な変化が起こります。
ここでは、その代表的な3つの変化を「姿勢」「呼吸」「関節の負担」の3つの視点からわかりやすくお話しします。
1. 姿勢が安定する
● お腹の奥の筋肉が「土台」になる
ドローイングで使う腹横筋(ふくおうきん)は、お腹の奥にある筋肉です。腰のまわりをぐるっと囲み、骨盤(こつばん)や背骨(せぼね)を支えています。
イメージとしては、体の中にあるコルセット。これがしっかり働くと、体がぐらつきにくくなります。
● 猫背や反り腰の改善にも
腹横筋が働くと、背骨がまっすぐに近づきやすくなります。
・猫背の人 → 背中が丸まりにくくなる
・反り腰の人 → 腰の反りすぎが減る
これは、腰や背中にかかる負担を減らす大きなポイントです。
2. 呼吸が深くなる
● 横隔膜(おうかくまく)と一緒に動く
腹横筋は呼吸をするときに動く横隔膜と仲良しです。
息を吐くときに腹横筋がお腹を引き込み、横隔膜が上に動きます。
すると、次に息を吸うときに横隔膜が下がり、肺にたくさん空気が入るようになります。
● 深い呼吸はリラックスにもつながる
深くゆっくりした呼吸は、体の緊張をほぐし、気持ちも落ち着かせます。
寝つきが悪いときやストレスを感じたときにも役立ちます。
● 呼吸の浅さを改善
スマホやパソコンの姿勢は胸を閉じてしまうので、呼吸が浅くなりがちです。
ドローイングをすると胸やお腹がしっかり動くようになり、**「たっぷり息が吸える」**感覚が戻ってきます。
3. 関節や筋肉への負担が減る
● 体幹がしっかりすると手足が楽に動く
体幹(お腹まわり)が安定すると、手や足を動かすときに余計な力がいりません。
これが、関節や筋肉への負担を減らします。
● 腰や膝の痛みを防ぐ
腹横筋が腰を支えると、階段や立ち上がりなどの動きで腰や膝への衝撃がやわらぎます。
これは将来の腰痛や膝痛の予防にもつながります。
● バランス力もアップ
お腹の奥の筋肉が働くと、立ったときや歩くときのふらつきが減ります。
「つまずきやすい」「足元が不安」という方にもおすすめです。
大事なポイント
・1日3分でもいいので、毎日続けること
・効果はすぐではなく、2〜4週間かけて少しずつ出てくる
・「あれ?疲れにくくなった?」という日常の変化に気づくことが第一歩
効かせるより、感じるを育てる ― 未来につながる小さな習慣
1. 「効かせる運動」と「感じる運動」のちがい
筋トレやエクササイズでは「ここに効かせましょう」という指導をよく耳にします。
これは筋肉を鍛えるうえで大事な視点ですが、筋力が弱い方や「なんとなく不調」が続く方には、まず“感じる”ことから始める方が安全で効果的です。
・効かせる運動:大きく動かしたり、負荷をかけて筋肉を直接鍛える方法。体力や筋力がある人向け。
・感じる運動:呼吸や体の中の動きを意識し、深層筋や姿勢を支える筋肉にやさしくスイッチを入れる方法。
2. なぜ「感じること」が未来の体を守るのか
・小さな変化に気づける
「今日は腰が重い」「呼吸が浅い」など、わずかな変化を察知しやすくなります。
・安全に動かせる
感じながら動くことで、フォームの乱れや無理な姿勢を防ぎ、ケガや慢性的な負担を減らせます。
・深層筋が自然に働き始める
腹横筋のような奥の筋肉は意識しないと使いにくい場所。感覚を持って動かすことでスイッチが入りやすくなります。
3. 続けるためのシンプルな工夫
・短く・毎日:1回30秒〜1分でもOK。毎日体に刺激を送ることが大切です。
・生活に溶け込ませる:起床後、椅子に座ったとき、寝る前など日常の中で取り入れると長続きします。
・呼吸を止めない:吐く・吸うのリズムを保ち、体を緊張させすぎないようにします。
4. 今日からできる「感じる習慣」
1日1回、次の流れを試してみましょう。
椅子に座っても仰向けでも構いません。
1.鼻から3秒かけて息を吸い、お腹をふくらませる
2.口から5秒かけてゆっくり吐き、おへそを背骨に近づけるようにお腹を引き込む
3.吸を止めずに5秒キープ
4.これを3呼吸分くり返す
所要時間は1分ほど。
慣れてきたら回数や時間を少しずつ増やしてみましょう。
院長からのひとこと
私は、すべての方に「たくさん動いて筋肉を鍛えましょう」と言うつもりはありません。
それよりも、まずは自分の体と向き合い、“感じる時間”を持つことを大切にしてほしいと思っています。
動ける自分でいるためには、大きな負荷よりも、日々の中で少しずつ「ここが動いているな」と気づける力を育てることが近道です。
痛みがあるときは、無理をせずご相談ください。
そして、痛みがなくても「なんとなく不調」「少し動きにくい」と感じたら、それは体が出してくれている小さなサインかもしれません。
そのサインを見逃さず、一緒に受け止めながら、5年後・10年後も軽やかに動ける身体を目指していきましょう。
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